漆の世界 〜その巧み〜

平成28年6月4日(土) 〜 7月中旬


 初代原光が元禄2年(1689)に「新潟屋」を開業してから325年余り、商いを堅実に継承・発展させ、黒松の植林事業、公共・水利・救済事業、庄内藩・米沢藩への献金、神社・仏閣への寄進など、今できることを着実に実行し、地域貢献に努めてきています。
 三代光丘は、明和5年(1768)に幕府の巡見使宿舎として本間家旧本邸を建造し、庄内藩主酒井家に献上しました。その後拝領し住まいとして使用、戦後の混乱期の中、昭和24年から同51年まで酒田市に貸し出し、文化センターができるまで公民館として利用されました。武家造りと商家造りが一体となった珍しい建築様式で、酒田市で最も古い建物です。

《本間家旧本邸 公民館の頃》


 四代光道は、文化10年(1813)冬季失業対策事業として「清遠閣」(現 本間美術館本館)と庭園「鶴舞園」を築造しました。江戸時代には、庄内藩主酒井家の領内巡視の際のお休み処として、明治・大正・昭和には“酒田の迎賓館”として利用されました。昭和天皇(東宮時代)や各宮様をはじめ、ヘレン・ケラー女史など、多くの貴賓名士をお迎えしてきております。

《清遠閣 迎賓館の頃》
              


《現在の本間美術館「清遠閣」「鶴舞園」》


 このような時代背景の中伝来した漆器は、様々な事業に基づいて御礼や御土産に頂戴した品々や、客人をもてなすために準備された食器や調度品などです。
 そこには、日常とは異なる特別な趣向が凝らされ、お客様に対する心遣い「おもてなしの心」が美しい形となって現れます。もてなしのために用意された調度品、螺鈿や蒔絵が施された硯箱、香盆、食器などから、江戸時代より大切に受け継がれてきた巧みな技と雅びな世界をご満喫下さい。

  


黒塗岩菊蒔絵硯箱


打込堆朱鶴丸絵広蓋


梨子地蒔絵
八角食籠


螺鈿梅竹牡丹丸形香盆


《特別公開》 若松蒔絵貝桶
  










お雛祭りの時に飾られる
貝桶・貝合わせ

 黒漆地に金の蒔絵が施された若松蒔絵貝桶を特別公開します。貝合わせは、平安時代から続く公家の遊戯で、対となる組み合わせの蛤貝を探します。武家においては婚礼調度品として取り扱われました。見事な職人の技をお楽しみに!
 酒田は北前船の海運と最上川の舟運によって栄えた湊町です。北前船で米や紅花を上方に運び、帰りは漆器や陶器、お雛様など、様々な物資や文化をもたらしました。その出発・到着の地である酒田は「西の堺、東の酒田」と称されるほどに栄えたのです。
 五代光暉以降、多い時には七隻もの船で商いをしていました。このような交流の広さは、器からも窺われます。
 町を歩けば今なお、北前船の文化を感じることができます。その歴史物語と共にお楽しみ下さい。



高埜濱舶


日和山眺望


本町通景

 当邸では、欄間や床の間、廊下の板張りなど特徴ある所、自然が織りなす不思議な造形美、趣深い設え、全国の銘石を配した庭などをご案内しております。お時間をゆっくりお取りになり、悠久のロマンに思いを寄せ、心と体をリフレッシュさせてみてはいかがでしょうか。
 皆様のご来邸を心よりお待ち申し上げます。



四季折々の山海の幸が豊富で「食の都庄内」と言われるほどです。お食事処やレストランでご堪能下さい!


「ふるさとの味覚」


 :桜マス 鯛 孟宗汁 月山竹 山菜の天ぷら イチゴ etc...


 :天然岩牡蠣 鮑のステーキ 口細カレイ のどぐろ 鮎 だだちゃ豆 メロン etc...



素敵なお土産をお持ち帰りください。




<次回展覧会のご案内>

「伝来された品々 事業と物語―歴史と歩む―」

7月中旬〜9月初旬
 本間家四代光道は北前船で商いを継承発展させ、荘内藩への献金、火防や貧民救済など様々な事業に努めました。冬期失業対策事業として別荘を築造、現在本間美術館「清遠閣」「鶴舞園」とお楽しみ頂いています。一方、常世田長翠に師事し俳諧を学び文学の普及にも努めています。全国から書籍を収集、蔵書印を作成、後に光丘文庫設立へと続いています。北前船で運ばれた美術品や歴史資料を公開します。酒田の町で光道の足跡をたどり町と共に歩んだ志にふれてみてください。